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2021.03.12

地方移転で使える補助金例とオフィス移転時のスケジュール

地方創生の取り組みと新型コロナウイルスの感染拡大による感染予防の観点から、2020年に入ってから本社機能の地方移転を検討する企業が増えています。

本社が都心にあることによって、オフィスの賃料などの固定費は地方と比べてコストが高くなることや、新型コロナウイルスの感染リスクも高く、テレワークや業務のオンライン化が進んだことで、東京にオフィスを設置している意味を考えるきっかけとなったという企業は少なくありません。

地方創生期間は令和4年3月31日までとされているため、成果次第では令和4年以降補助金が廃止される可能性もあり得ます。

実際に現状の制度は令和4年3月31日までと明記している自治体もあるので、地方移転を検討している企業は早急にスケジュールを組む必要があるのです。

そこでこの記事では、地方移転で使える補助金例と、オフィス移転時のスケジュールをご紹介します。

本社機能の地方移転を検討しているという方は、是非参考にしてみて下さい。

本社機能の地方移転で補助金が出る自治体例

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本社機能を地方に移転したいという企業に対して、各自治体ごとに補助金制度を設立しています。

まずは、本社機能の地方移転で補助金が出る自治体例をご紹介します。

熊本県

熊本県は、世界有数のカルデラを誇る阿蘇があることで「火の国」と呼ばれているのが有名で、活火山から生み出された美しい大自然が魅力です。

そしてさらに、阿蘇山の噴火によって形成された地層によって流れる清らかな湧き水が県内に1,000以上あることから、水資源の宝庫であり「水の国」でもあるのです。

県内各所にある温泉は118カ所にも及び、いつでも気軽に温泉に入れる環境も魅力的。ご当地キャラクターのくまモンは、日本各地だけではなく世界へと活躍の場を広げていて、日本で一番有名なご当地キャラクターと言われています。

そんな熊本県の「熊本県企業本社機能立地促進補助制度」は以下の通りです。

補助要件

限度額

主な補助対象経費及び補助金額

投資額3,000万円以上、かつ新規雇用者数50人以上

50億円

・固定資産投資額及びリース資産額の合計10%
・事業所年間貸借額×1/2(4年間)
・専用通信回線年間使用料×1/2(4年間)
・新規雇用者数 50~70万円/人

実際に2020年3月には、この制度を使ってフリーランスや小規模事業者向けのプロジェクトマッチングに力を入れている、株式会社Lbose東京都渋谷区から熊本県熊本市に本社を移転していて、地域の課題解決に取り組むとともに自社事業の開発運営を進めているということです。

北海道札幌市

北海道は日本の総面積のおよそ20%を占める広々とした広大な土地が魅力で、夏は涼しく冬は寒いというのが一般的なイメージではないでしょうか。

夏はクーラーなしでも夏の夜の寝苦しさを感じることがないほど快適に過ごせますが、冬は大雪が積もることの多い地域です。

道庁所在地である札幌市は、政令指定都市でもあり人口は増加傾向にあります。ショッピングやグルメを楽しむこともできるうえに、ウィンタースポーツも楽しめるような自然もあるのが魅力です。

そんな北海道札幌市の「本社機能移転促進補助金」は以下の通りです。

補助要件

限度額

助成内容

・本社または本社機能の一部を、道外から札幌市内に移転すること
・対外的に本社または本社機能の一部移転の事実を公表すること
・20人以上の正社員(新規雇用・異動)

(人件費)
5,000万円×3年

・正社員1人当たり50万円/年度
・正社員以外の常用雇用者1人当たり10万円/年度
(障がい者50万円)

(開設費)
本社移転:6,000万円
本社機能移転:3,000万円

工事費、事務機器購入費、採用費の1/2
(消費税相当額を除く)

本社機能移転促進補助金については、道外の企業または顧客に対するサービスを行うことや、他にも細かい要件があるので必ずホームページを確認するようにしましょう。

アクサ生命は、東日本大震災の経験を踏まえ、事業継続体制の強化を目指して2014年に札幌本社を設立しました。

札幌本社は社員120名に加えて派遣スタッフなどを含めると総勢400名を超える体制となっていて、顧客サービスを継続的に提供できる体制を構築しています。

新潟県新潟市

新潟県の北東部に位置する新潟県の県庁所在地であり、政令都市である新潟市は、人口79.2万人の大規模農業の改革拠点として、国家戦略特区に指定されている土地です。

日本海側の気候の特徴として、冬に降水量が多くなることがありますが、沿岸部は実は温暖で、新潟県内でも雪が少ない地域となっています。

地魚は高級魚であるのどぐろをはじめとした、南蛮えび、さくらますなどが特産品として有名で、野菜や果物の農産物も楽しむことができます。お米の産地としても有名な新潟ですが、酒造も数が多いことでも知られています。

そんな新潟県新潟市の「新潟市本社機能施設立地促進事業補助金」は以下の通りです。

補助区分

補助率

限度額

設備投資補助

移転型(市外からの移転)
投下固定資産額の10%

1億円

拡充型(市内での拡充)
投下固定資産額の5%

5千万円

雇用促進補助

・市民雇用1名あたり25万円
・正規雇用1名あたり50万円
・正規雇用への転換1名あたり25万円

500万円

交付申請期限は指定を受けてから3年以内となっていて、上記は設備投資型の補助内容となっていますが、オフィス型として、賃借に要する費用の補助もあります。

アプリ分析支援や共創事業を行っているフラー株式会社は、2020年11月に本店を新潟に移し、新潟本社として設立しています。

新潟市の地域経済の活性化とデジタル戦略推進に取り組み、将来的には日本におけるITの地域格差を無くすということを目指しています。

徳島県

四国の東部に位置する徳島県は、兵庫県の淡路島と大鳴門橋で結ばれていて、本州から車移動も可能です。

飛行機、電車、車、高速バス、フェリーとさまざまな交通手段があり、東京から飛行機で約1時間10分程で到着します。

約400年という歴史を誇る阿波おどりが県内各地で開催されますが、なかでも徳島市の阿波おどりは100万人以上を動員する県下最大級のイベントとなっています。

食の面では徳島ラーメンなどのグルメや鳴門鯛、鳴門わかめ、なると金時などのブランド食材が充実しているのも特徴です。

そんな徳島県の「本社機能移転促進事業」は以下の通りです。

補助対象経費

補助率

限度額

県外企業が県内に本社機能を移転する事業に要する経費

新規地元雇用者が5人以上
補助対象経費の25%

1億円

徳島県では企業誘致に対する取り組みを積極的に実行していて、地方創生のロールモデルとしてメディアでも数多く取り上げられるなど、成果が見られる地域です。

上記の補助金と併用して「雇用奨励事業」の補助金も申請することができ、新規雇用者1人につき40万円など、最大6,000万円を受け取ることができます。

サテライトオフィスの設立が盛んな徳島県ですが、本社機能の移転も行われています。サイファー・テック株式会社は、2013年5月に徳島県海部郡美浜町に移転しました。

社員のクリエイティビティを育むために、ワークライフバランスの実現を図るべく、職場環境や制度の整備を進める一環として、サテライトオフィスとして開設していた美浜町の「美浜Lab」に本社の移転を行い、さまざまな地域交流活動にも積極的に参加するなど、新たな価値観の創造を目指して移転を決定したということです。

オフィス移転時のスケジュール

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魅力的な支援制度を設けている自治体が数多く存在するなかで、実際にオフィスを移転させる際に必要なことを学んでおく必要があります。

オフィスの移転スケジュールは、賃貸契約によって違いはありますが、6ヵ月前には立てるようにしましょう。

ここからは、オフィス移転時のスケジュールをご紹介します。

移転の目的の明確化

補助金の期限に焦ってしまい、本社を移転する目的が曖昧になってまうと、のちのち後悔するということにもなり兼ねません。

まずはオフィスを移転する理由を考えてみましょう。一般的には以下のような理由が代表的です。

  • 生産性の向上
  • 従業員のワークライフバランスを保つため
  • 優秀な人材の確保
  • 家賃の問題

都会の狭いオフィスでは、従業員のやる気を引き出すのに苦労する場合もあります。地方に本社を移転することによって、同じ家賃でも広くて明るいオフィスに作り変えることも可能です。

また、優秀な人材が数多く存在する地域もあり、そのような地域は大学や専門学校が多い、教育に力を入れているなどさまざまな特色があります。

このように、どこに重点をおいて移転を決めるのか、移転によって達成したい目標や改善したい課題は何なのかを明確にするようにしましょう。

移転先の条件

目的が明確になったら、次に必要なのは移転先にどのような条件を求めるかを考えることです。

オフィスの面積や最寄り駅からの距離など通勤のアクセスの良さ、外観や街のイメージといったことから賃料まで、さまざまな条件を明確にし、移転先を検討するようにしましょう。

また、その条件には優先順位をつけることも重要です。全ての条件を満たす場所がもちろん最適ですが、あまりにも条件が多すぎると移転先選びに難航する可能性もあるため、優先順位をつけて妥協するべきところも明確にしておきましょう。

旧オフィス解約と現状復帰工事

オフィスを解約する際には、オーナーやビル管理会社に前もって解約予告をする必要があります。この解約予告の期限が通常は6ヵ月、または3ヵ月となっているため、契約書の内容を事前に確認し、期限通りに解約予告をしましょう。

また、賃貸借契約書には、どのような状態で貸主に返すべきかが明記されています。契約書の内容とともに、直接オーナーやビル管理会社と明け渡しの条件を確認し、現状復帰工事を依頼しましょう。

新オフィスへの引越し準備

移転先が決定したらいよいよ新オフィスへの引っ越し準備が始まります。新オフィスの内部のレイアウトや各部署で必要なスペースなどを割り出し、業務動線を確認しつつレイアウトを組むようにしましょう。

また、新オフィスで必要なOA機器や設置する家具などをリストアップし、購入するものを選定して発注するなどの準備が必要になります。

オフィス移転の引越し業者の選定は3ヵ月前までには行い、1ヵ月ほどかけて少しずつ梱包を始めるなど引越し準備を計画的に進めるようにしましょう。

各種手続き

オフィスを移転する際に必要な届け出はいくつかあります。以下をご覧ください。

  • 郵便物届出変更届:郵便局
  • 異動届出書:税務署と地方税務事務局
  • 給与支払事業所等の開設・移転・廃止届出書:給与支払事務所等の所在地の所轄税務署
  • 適用事業所所在地名称変更(訂正)届:社会保険事務所
  • 雇用保険事業主事業所各種変更届:公共職業安定所
  • 労働保険名称・所在地等変更届など:労働基準監督署
  • 本店移転登記申請書:法務局

それぞれ移転から5日以内~1ヵ月以内と、期限が違うので期限内に必ず提出先まで提出できるようスケジュールを調整しておきましょう。

さらに、取引先への移転案内の通知、印刷物やホームページの住所の変更なども併せて行う必要があります。

まとめ

地方移転で使える補助金例と、オフィス移転時のスケジュールをご紹介しましたが、参考になりましたか?

本社の地方移転は、地方創生に大きく貢献できる内容です。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大によってテレワークやオンライン化が進んだことで、地方移転はより現実的なものとなりました。

政府が地方創生に取り組みだした当初、都心で暮らす従業員のなかには、移転に伴う移住に反対だという方が多かったのですが、新型コロナウイルスの感染拡大によって人々の意識も変わりつつあります。

感染リスクの高い都心での生活は、テレワークが可能となった今、従業員自身が移住を考えるきっかけにもなっているのです。

そういった状況のなかで、地方移住の目的を企業として確立し、従業員に落とし込むことで移住に前向きな従業員は増えると予想されます。

さまざまな問題をクリアにしていくと、地方移転に対するメリットを大きく感じることができるのではないでしょうか。

今回ご紹介した自治体以外にも、地方移転に積極的に支援をしている自治体は数多く存在します。

移転先への条件を明確にし、各自治体のホームページから補助金制度や移住制度について調べ、本社の地方移転を成功に導きましょう。

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