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2021.03.09

企業誘致の8つの成功例と自治体別の個性豊かな取り組みを紹介

地方創生の目玉である企業誘致は数年前から政府・地方自治体が積極的に進めてきた取り組みですが、ここにきてまた企業誘致に追い風が吹いています。

年々件数を増やしているサテライトオフィスや支社だけではなく、工場、さらには本社機能の一部もしくはすべてを地方移転させる企業も出てきています。自治体の中には、外国企業の誘致にも取り組み始めたところもあります。

企業誘致は、誘致する地方自治体と地方進出する企業が手を取り合った結果、実現するものです。地方自治体が行っている企業誘致の取り組みにはさまざまなものがありますが、自社の事業やニーズに合った進出先を選ぶことも大切です。

この記事では、企業誘致の成功事例や全国の各自治体が取り組んでいる個性豊かな企業誘致のための取り組みについてご紹介します。

現代は企業が地方進出しやすい時代

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平成30年度税制改正では小規模オフィスの移転や拡充等を支援対象として、移転型事業の対象地域の追加や要件の緩和などが実施されました。

企業が本社機能を地方へ移転させることを促す政策はより充実してきており、それに伴って制度の利用を促進するためのセミナーなども行われています。

地方への移転を考えている経営者に対しては、事業計画策定に向けた情報提供や相談にも対応しているなど、現代は企業が地方進出しやすい環境になっています。

BCPや機能配置の最適化のために本社機能の一部を地方に移す企業は近年増えており、企業側の移転意欲も高まりを見せています。

BCPとは緊急事態が起きた場合を想定した企業の事業継続計画のことで、災害などの緊急事態が起きた際、企業が被る損害を最小限に抑え、中核となる事業の継続や早期復旧を図ることを目的としています。

日本では2011年に起きた東日本大震災をきっかけとしてBCPが注目されることとなりましたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって再びBCPの重要性が注目されて始めています。

また、企業誘致は以前から積極的に進められてきた取り組みであるため、数多くの前例があるというのもこれから地方への移転や進出を考えている企業からするとメリットだと言えるでしょう。

企業誘致を成功させている事例や、失敗してしまった事例など、いくつもの事例を見ておくことで自社が地方に進出する際に参考にすることができるでしょう。

企業誘致の8つの成功例

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これまで、数多くの地方自治体が企業誘致を行ってきました。地域の特色を活かした取り組みによって企業誘致を成功に導いた自治体は多く、これらを参考にすることでよりよい地方進出が行えるでしょう。

ここからは企業誘致の8つの成功例をご紹介します。

三重県亀山市の事例

「世界の亀山」ブランドとしてその名を知られることとなったのが三重県亀山市の事例です。非常に有名な事例であるため、ご存知の方も多いのではないでしょうか。

三重県亀山市には、日本を代表する電気メーカー「シャープ」の亀山工場があります。このシャープ亀山工場は、三重県と亀山市が交付した企業誘致の補助金によって新設が決まった工場です。

かつて亀山工場では液晶テレビの製造が行われており、大々的な売り出しが行われた結果、日本国内のみならず世界各国にまで亀山の名前が知られることとなったのです。

現在、亀山工場では液晶テレビの製造は中止され、スマートフォンのディスプレイが作られています。また、亀山市にはアップル社のオフィスがあり、亀山工場には専用の連絡通路が通っています。

沖縄県うるま市の事例

沖縄県は情報通信産業特別地区に指定されており、積極的にIT関連企業の誘致を行っています。その結果、県内で3万人近いIT企業従事者を確保するなど、成功を収めています。

沖縄県は最低賃金が安いこともあり、企業としては人件費を抑えられるというメリットがあります。最近ではIT関連のベンチャー企業や中小企業も沖縄県に移転しているケースも多くみられます。

リゾート&ITの戦略拠点として作られた「沖縄IT津梁パーク」は優れたリゾート環境を持つ沖縄ならではの良さを活かし、IT分野の知的想像を行える施設となっています。

福岡県福岡市の事例

産業創発力が総合的に高いとして「成長可能性都市ランキング」の「総合ランキングでみた成長可能性の高い上位都市」で第2位、「ポテンシャルランキングでみた成長可能性の高い上位都市」で第1位となった福岡県福岡市も、企業誘致を成功させています。

福岡県福岡市が乗り出したのは「2024天神未来想像 天神ビッグバン」と名付けられた民間再開発促進事業です。

アジアの拠点としての役割や機能を強めて新しい空間、そして雇用を生み出すためのプロジェクトで、下記のような具体的な数値目標が掲げられています。

【天神ビッグバンの数値目標】

2024年までの10年間で30棟の民間ビルの建替えを誘導し、新たな空間と雇用を創出する

  • 延床面積:約1.7倍(444,000㎡→757,000㎡)
  • 雇用者数:約2.4倍(39,900人→97,100人)
  • 建設投資効果:2,900億円
  • 経済波及効果:8,500億円/年

天神ビッグバンではすでに、メルカリ、ライン、ケンコーコム、オイシックスなど大手ITベンチャー企業を誘致しており、今後さらに多くの企業の誘致するため、呼び込みを強化しています。

岩手県北上市の事例

岩手県北上市は岩手県のほぼ中央にある市です。東北新幹線や東北自動車道などの交通網が発達しているため、北日本では随一の利便性を誇ります。

そんな岩手県北上市は地道な企業誘致を続けてきたことによって、工業地帯集積地として発展。戦略的な計画を立て、早い段階から独自に用地買収をし目的達成へ向かって地道な努力を重ねてきたことが功を奏しました。

各ステージごとに具体的な目標を設置したことが結果につながりました。また、企業を誘致しただけで終わりではありません。その後は周辺産業との連携に力を注いだことも成功への鍵となったようです。

工業分野には各段階がありますが、それぞれの段階を担う企業を幅広く誘致。そして、大きな産業集積地を作り上げるまでに至ったのです。

現在では県内最大の工業都市への発展を遂げており、全10箇所の工業団地、流通基地、産業業務団地が北上市内に整備されています。

山口県の事例

平成元年以降、山口県は企業誘致を積極的に行い181社を誘致し、13,889人もの雇用を生み出しています。

誘致企業数を地域別で見てみると、宇部・小野田地区や山口・防府地区など大規模な工業団地があるエリアで多くなっており、全体のおよそ6割を占めています。

山口県が行った企業誘致の取り組みが成功を収めた理由が、鉄道や高速道路網などの交通網を整備したことだと言われており、交通アクセスの利便性は企業誘致成功の大きな鍵を握っていると言えるでしょう。

企業誘致は日本全国の地方自治体が実施していますが、企業を呼び寄せるための戦略や取り組みは各地方自治体によって異なります。しかしその中でも交通網の整備は重要な企業誘致の戦略であり、また、課題でもあります。

神奈川県横浜市の事例

現在では、国内だけでなく海外企業の企業誘致にも注目が集まっています。日本の経済的な閉塞感を打ち砕くため、積極的に海外の企業を誘致し、国内企業を活性化するということを目的としています。

たとえば、アメリカでもいくつもの州が積極的な企業誘致を行っており、ノースカロライナ州に三菱電機が工場を作りました。

日本でも2015年に神奈川県横浜市でアメリカ企業である「Global MRO Products Corporation」が「グローバル・エムアールオー・ジャパン(株)」という日本法人を設立。

Global MRO Products Corporationは日本製自動車関連部品等の調達や販売を行っており、日本進出によって日本製品の調達力強化と、事業拡大を目指しています。

この企業誘致は神奈川県、横浜市、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)が連携してバックアップを行った結果、実現したものです。

少子高齢化問題、東京圏への人口集中などさまざまな問題を抱えている日本では、これまで以上に戦略的に企業誘致を進めていくことが求められているでしょう。

熊本県菊池郡大津町の事例

熊本市と阿蘇山の中間に位置する大津町は企業誘致によって大きく人口を増加させました。

九州自動車道熊本インターまで約20分、JR豊肥本線が走るなど交通アクセスのいい大津町は近隣の6町村合併したことで1956年には人口2万3000人という規模の町となりました。

しかしその後、高度成長期に人口が流出し続け、1975年には1万8000人にまで人口が減少。これに歯止めをかけたのが、1976年に行った企業誘致です。

自治体が本田技研工業の誘致に成功したことをきっかけに交通アクセスの良さを活かした誘致が進み、人口が増加し続け、2007年には3万人を突破するまでになりました。

大津町の取り組みが成功に至った大きな要因と考えられているのが、複数の工業団地などで製造業の企業誘致を続けてきたことです。

1997年には大きな宅地開発が美咲野地区で行われ、快適な暮らしの環境も整備。それでいて町の3分の2は山林であるため、豊かな自然が残っているなど、利便性と暮らしの快適さが両立した土地となっています。

熊本県葦北郡芦北町の事例

企業誘致のあり方は多様化しており、本社機能移転や工場の新設、地方支社の設置などさまざまです。その中でも年々開設件数が増加しているのがサテライトオフィスです。

熊本県葦北郡芦北町では、2012年3月に閉校となった旧計石小校舎をサテライトオフィスとして整備。現在ではIT企業を始めとして、3社が入所しています。

芦北サテライトオフィス計石と名付けられたこのサテライトオフィスは、要件を満たしたIT関連企業に対し、通信回線や設備などの資金援助、環境づくりを芦北町がバックアップ。

オフィスだけでなく住居物件の紹介も行うなど、新しい環境で働く・暮らす企業や、企業で働く人をしっかりとサポートしています。

熊本県は補助制度が充実していることが特徴で、製造業や物流業向けの補助金は総額最大30億円と全国でもトップクラス。

情報通信関連産業向けの支援としてはオフィス賃料の最大2分の1を3年間にわたって補助する制度もあり、さらには企業が進出した後も人材確保支援などの手厚いフォローを行っているため、地方進出を検討する企業が早い段階で地方に馴染み、事業を展開していける環境が整えられています。

企業誘致のための取り組みは自治体によってさまざま

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企業誘致のための取り組みは各地方自治体によっても異なり、地域の文化や特色を活かした個性豊かな施策が行われています。

伊賀焼をはじめとする伝統工芸品が多数ある三重県伊賀市では、文化を世界へ発信するために日本の伝統や歴史に関心のある海外企業を誘致。

軽井沢から近い場所にある長野県小諸市では、立地面での優位性を活かしてIT企業関連の誘致を積極的に行っています。小諸ワインの生産地でもある小諸市は醸造業の企業誘致も行っているなど、地元の強みを活かし、企業を絞り込んだ施策で誘致を成功につなげています。

現在進行中の企業誘致プロジェクト「水上村チャッカソン」

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熊本県の隠れ里・水上村で2020年10月、新たに幕を開けたのが人口減少という大きな問題を抱える水上村に企業を誘致するという一大プロジェクト「水上村チャッカソン」です。

水上村役場や地元企業、観光協会、教育委員会、地域おこし協力隊そしてIT企業がそれぞれにアイデアを出し合い、企業誘致を目指しています。

  • 天空のサウナ(水上村スカイヴィレッジの景観を活かしたサウナをつくる)
  • 空き地と空き家の活用
  • おためしサテライトオフィス(2泊3日の水上村視察ツアー無料提供)
  • 5Gインフラ設備
  • 村全体を使った実証実験の村づくり(実証実験がしたい企業と水上村をマッチング)
  • エッジの効いたWebサイトや動画によるPR

2日間にわたるディスカッションとグループワークの結果、出揃ったのは上記のようなユニークなアイデア。

今後はこの魅力的なアイデアを、企業誘致のための具体的なアクションにつなげていきます。

まとめ

全国各地で行われている企業誘致。現在では国内企業だけでなく海外企業の誘致も盛んになっているなど、その動きは活発化しています。

新型コロナウイルス感染症の影響からリモートワークやテレワークが普及し、時間や場所を選ばない働き方が当たり前になってきた現在では、企業で働く従業員も「都会で働く必要性」に疑問を感じてきているようです。

今は政府や地方自治体の後押しも手厚く、進出後のサポートもあります。

今回ご紹介した情報を参考に、企業の成長に繋がる地方進出をぜひ検討してみてください

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