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2023.02.11

「熊本Bizカンファレンス2022」レポート

熊本というステージでビジネス展開を行う企業の交流を活性化させ、共に学び、視座を高めることで連携の可能性を探り、地方でビジネスすることをポジティブに変換していくことを目的とした「熊本Bizカンファレンス2022」が1118日(金)に開催されました。

平日昼間にも関わらず、地場企業や県外からの進出企業はもとより県外企業からも多数の来場があり、会場は熱気に包まれました。

オープニングでは、主催の熊本県より商工労働部 産業振興局・企業立地課 課長の工藤晃氏が挨拶。「熊本で人口減少が進む中、県外から参入された企業で若者たちが活躍できる受け皿を作ること。また、熊本への参入を検討している企業の皆さんが、地場でビジネスパートナーを見つけて連携していただくことで、熊本を盛り上げていきたい」と、開催の趣旨を語りました。

続いて当カンファレンスの企画・運営を行う(株)MARUKU代表・小山光由樹氏は、「企業の交流の場として活用していただきたい」と挨拶。「地方をステージにやっていくと、成長の軌道に乗せることは簡単なことではありません。参加者同士が出会い、その関係性を育んでほしい。こういう課題で悩んでいるなど情報交換をすることで、その先の協業のモデルを模索するなど、ぜひイベント後にも繋がっていただければ」

3部構成によるトークセッションでは、地方経済の発展に不可欠な「産業構造の多様化と連帯」を創出するべく、登壇者たちの提言によって考えを深める機会に。全体を通して発信されたメッセージ。それは「地域におけるコミュニティを通じて広がるビジネスチャンスの可能性」でした。

不確かで困難な時代だからこそ求められるビジネスコミュニティ

モデレーター
iroha 代表取締役/エキサイト執行役員 大熊 勇樹さん

パネリスト
RITAグループホールディングス(株)代表取締役 倉崎 好太郎さん
アルサーガパートナーズ(株)取締役 渡邉 直登さん
(株)倉岡紙工業 代表取締役CEO 倉岡 和徳さん

最初のトークセッションでは、熊本を拠点に活躍する経営者3人がパネリストとして登壇。「ビジネスコミュニティの必要性」をテーマにしたやり取りがスタートしました。3人はいずれもさまざまなビジネスコミュニティに関わってきた経験をもとに、独自の見解を披露。エスプレッソのようにうま味が抽出された内容に、会場中が聞き入りました。

そもそも、なぜ今こうしたビジネスコミュニティが必要か? それは、新型コロナの蔓延以降、経営者や企業に与えられた課題が複雑化していること。自社だけで問題解決することが難しいなか、共通の目標や課題をもつ企業が一緒に取り組んでいくという流れが盛り上がりを見せ、今後も必要性を増すと考えられるからです。

では一体、ビジネスコミュニティとは、どのように有効なのでしょう?

まず、参加する側のスタンスとして「何をテーマにするかが大切」と語る倉崎さん。「学び、社会貢献、友達作り。それぞれ価値観に合うコミュニティに入ればいい」と前置きしたうえで、「僕は会社を成長させたい意欲が強かったので、熊本で一番経営を学べるコミュニティに入りました。目的が明確だと、同じ価値観を持つ人も多いですし。あとは、自分の居心地が悪いところに飛び込んで行く。上場企業の経営者を前にして最初はガチガチでしたが、やがて普通に話せるようになり、視座も上がりました」。そう語る倉崎さんに、ほかの二人も共感。

渡邉さんは「この人はすごい、と思う社長さんが所属する会に入りました。本を読むだけでなく、リアルにお会いしてオーラを感じながらやり取りさせていただくことで肌感覚ができる。同じ人間だと思えば、自分も頑張ればそこに行けるかもしれないと勇気をもらえるので」

「群れて何かやってもしょうがない」と、コミュニティにマイナスの印象を抱いていた倉岡さんは、あるコミュニティに参加したことで考えに変化が。「運営側も参加者も一生懸命で、参加者同士がお互いに高め合おうとしているところに感銘を受けました。尊敬する経営者が備えもつ問題意識の高さ、アクションの速さ、ゴール設定の正確さ。非常に学びが多いです」

一方、ビジネスコミュニティを運営する側として大切なのは「方針を決めて、しっかり情報を発信していくこと。継続することに意義がある」(倉崎さん)

運営と聞くと大変そうなイメージもありますが。「個人では接点がないような有名な経営者も、団体であればゲストとして声を掛けやすくなる。運営者だと自然に仲良くなれるので、その後も経営を教えていただいたり」(倉崎さん)とメリットを教えてくださいました。

最後にスピーカーの大熊さんからビジネスコミュニティへ参加するためのアドバイスを求められると。「こうして県外企業、参入企業、地場企業の皆さんが揃っていますが、一緒に熊本を良くしようという思いは一緒だと思うので。スティーブ・ジョブズ氏の言葉を借りれば、Connecting the dots(点と点をつなげる)。コミュニティを通じて手を取りあい、お互いにビジネスがうまくいくといいですね」と倉岡さん。

「熱量を持って参加してほしい」と語る渡邉さんは、「いろいろ参加して存在を知ってもらえると、いつか必要なときに思い出してもらえる。そう思って活動に参加してきました。まずは知っていただかないとビジネスは始まらない。ビジネスコミュニティに顔を出すことが大事だと思います」。

ビジネスコミュニティとは、受け身ではなく、参加者も一緒に作り上げるもの。積極的にいいコミュニティを作るという姿勢で参加することで、相乗効果が生まれるとのメッセージが印象的でした。

ローカルならではの特性を掴みビジネスチャンスを創出する

(写真左から)
モデレーター
(株)メディアプラン代表取締役 荒木 卓也さん

パネリスト
(株)くまなんピーシーネット代表取締役 浦口 康也さん 
(株)システムフォレスト代表取締役 富山 孝治さん
熊本ソフトウェア(株)ERP事業室マネージャー 櫻木 誠さん

熊本におけるビジネスコミュニティの有効性を学んだあとは、次のセッションへとバトンタッチ。ソフトウェアサービス業界で構成される「(一社)熊本県情報サービス産業協会」に所属する3人は「熊本ローカル企業から見た地域ビジネスの可能性」というテーマのもと語り合いました。

企業データの復旧事業をはじめ、警視庁のサイバーセキュリティなどにも関わってきた浦口さんの会社では、受託の7割以上が県外から。そこへ至るまでには「どうやったら熊本にいながら選ばれるか」を突き詰め、試行錯誤してきたといいます。

「データが消えてしまったとか、インターネット詐欺に困っているとか。相談を受けるたびに解決しようと努めてきたことで世の中で巻き起こるリスクのトレンドに関わることができ、ビジネスへと変換してきました」と、オンリーワンの強みで成長してきたことを振り返ります。

一方、熊本県南の人吉にクラウド型システム開発会社を構える富山さんが「熊本はブルーオーシャン。県外から参入するなら今こそビッグチャンス」とコメントすると、観客席の皆さんは興味津々。

「大手の企業はまず、福岡のような都市部や大企業に営業をかけるので、数人規模の会社だと相手にされにくい。熊本にはそうした企業が多く、我々が提供するサービスの話を聞いてもらえたことが、会社の成長に繋がってきました。今は若い創業者の方々が増えてきましたし、老舗企業も代替わりしている時期。良いものは取り入れていこうとする企業文化が生まれています」と富山さんは分析します。

そうしたローカルメリットがある一方で、半官半民のソフトウェア会社に勤めながらITエンジニアのコミュニティを運営する櫻木さんは、従業員目線から感じるローカルの弱みを披露。「東京だと有名な人が一般企業の従業員だったりしますけど、熊本だとそのレベルで名前が売れている人が少ない。従業員が外で活躍できる場があるといいなと感じます」

それを聞いていた浦口さんは、「経営者と従業員は情報格差が大きいと思う。社員全体のコミュニケーションのあり方とか情報交換の場を考えていかないと、もったいないですね」と理解を示しました。

最後に「熊本でビジネスがうまくいくコツ」として、「失敗しないこと」とアドバイスした富山さん。「厳密に言えば、失敗してもいい。その分、小さな成功を繰り返して失敗を取り戻していく。真摯に最後までやり切ると、横の評判に繋がっていくんです。『あいつ失敗したけど、いいやつだな』と思われることが、田舎ではすごく大事。私もそこを意識しています」

M&Aや東京進出への誘いが多いにも関わらず、今後も熊本を拠点にビジネスを展開するという浦口さんは、理由として「熊本は自分をクーリングできる重要な拠点」とコメント。「新型コロナによって働き方が変わったこともあり、熊本はいい気づきを得られる場所だと改めて思います。この風土や時間の流れをイノベーションやクオリティに変換し、新たなビジネスを全国へ展開していくホームタウンにしていただければ」と、参入を検討する皆さんに期待を寄せました。

地方におけるスタートアップ広がる可能性と必要な覚悟

(写真左から)
モデレーター
(株)Lbose 執行役員 椿原 ばっきーさん

パネリスト
(株)Colori 代表取締役 長谷 直達さん
(株)ドーガン・ベータ 取締役パートナー 渡辺 麗斗さん

熊本ならではのビジネスの可能性や付加価値について学びを得た後は、いよいよ本日最後のセッション。テーマは「熊本スタートアップビジネスの現状と可能性」です。

最初に長谷さんが自己紹介をすると、会場からどよめきが。旅行で熊本を訪れた瞬間の「香り」に惹かれ、3日後には移住していたという長谷さん。東京でSNS「mixi」の責任者をはじめとする有名企業で、スタートアップを成功へと導いてきた立役者です。

一方、10年前に福岡へ移住し、ベンチャーファンドという形で九州のスタートアップに投資してきた渡辺さん。地域で生まれたお金を集め、地域のために使うという「金融の地産地消」を大事にされています。

モデレーターを務める椿原さんも、10年前から熊本でスタートアップが育つ土壌をつくり、現在は企業の新規事業立ち上げなどに関わる人物。そんなスタートアップのプロフェッショナルたちが口を揃えるのは「スタートアップを定義するのは難しい」ということでした。

「スタートアップって働き方や考え方だと思っていて。今までの延長線上にはない変化をつけてジャンプしようというときの選択肢の一つ」(長谷さん)。日本全体が人口減に向けて進む中、どの業界も経営を継続させるべく新規事業立ち上げを考え、そうした相談が長谷さんのもとに多く寄せられているといいます。

スタートアップといえば一から起業するイメージですが、「並外れたチャレンジ精神や突破力がないと、アントレプレナー(起業家)になるのは難しい」と長谷さん。「日本の国民性を考えると、イントレプレナーとして社内起業や社内チャレンジを増やしていくことが大事。企業の中とはいえ、事業を進めていくには孤独を伴います。そういうときにメンタリングをしてあげる人がいると、うまく機能していくでしょう」

渡辺さんは投資家の視点からある変化を感じているそうで、「ひと昔前までベンチャーキャピタル産業では、車で1時間以内に行けないところには投資をしないというのが鉄則でした。これはシリコンバレーから派生した考えで、僕もそれで福岡に移住したのですが。10年経った今では『どこでもいいよ』という流れに変わった。投資のあり方が変わったことも、地方におけるスタートアップビジネスの広がりに影響をもたらしていると思います」

スタートアップの支援としては「まずお金」と考えがちですが、「そうとは限りません」と渡辺さん。「仕事を発注するとか、共同事業をやるとか。研究開発する場を提供するといった支援の方法もあります」。すると、長谷さんからこんな提案が。「空き家と規格外野菜を提供してそこで暮らせるようにすると、フードロスや空き家問題の解消にもなる。そういったインフラを作って『自由にチャレンジしていいよ』というのも、盛り上げ方としてありかも」。次々とアイデアが湧き出す軽快なトークは、あっという間に終盤へ。

最後はお二人からスタートアップに興味を持った皆さんへアドバイスがおくられました。

「誰もが共感・納得できるものは、もう古い。共感されないけれど、覚悟を持ってやるのが新規事業だと思っていて。スタートアップを働き方、考え方として捉え直してみると、面白いんじゃないかな」(長谷さん)

「スタートアップというブームメントに先陣を切って飛び込んでいる人たちから学ぶことは多い。応援するだけではなく、会いに行って学んで、それを他の人に伝える。みんなでそれをやっていくと、すごくいい世界になると思います」(渡辺さん)

九州のへそ・熊本で人と繋がり、地域に根をはり、新たなブームメントを起こしていく。そんな未来への希望が広がるカンファレンスは、熱気に包まれながら幕を閉じました。

カンファレンス終了後は、懇親会がスタート。

熊本の食材を使った料理と熊本のお酒を味わいながら、有意義な時間を過ごしました。

カンファレンスの効果か、積極的にテーブルを移動しては意見を交換されていた皆さん。イベント後にも繋がりが広がっていくことを期待しつつ、お開きとなりました。

 

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