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2021.03.01

今さら聞けない働き方改革とは?要点を分かりやすく解説

最近テレビや新聞、雑誌でよく耳にすることが多くなった働き方改革。何十年も昔から、「日本人は働きすぎだ」なんて言われてきてますよね。

働き方改革とは、その名の通り働き方を変えていく、改革していくというものになりますが、実際になんなのか?と言われると答えられる人はそう多くはありません。

そこで、この記事では働き方改革とは?という大きなくくりで、今更聞けない働き方改革についての概要や、実際に起こった事例などを紹介していきます。

働き方改革とは

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一億総活躍社会の実現に向けて

2019年より施行された働き方改革ですが、実際に何のことなのか、詳しくわからない人がほとんどだと思います。

働き方改革とは『一億総活躍社会の実現に向けて』というスローガンの元、働く人々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現するための改革で、そのために柔軟な働き方の実現や、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保等、さまざまな措置を行います。

日本の人口約一億人の中の、男性も女性も、若者から高齢者も、障害を持った方も、全員が活躍する社会の実現のための改革を働き方改革と言います。

8つの法律改正の総称

よくみなさんが間違えがちなのが『働き方改革』とは、新しくできた法律だということです。正しくは

  • 労働基準法
  • 労働時間等設定改善法
  • 労働安全衛生法
  • じん肺法
  • パートタイム労働法
  • 労働者派遣法
  • 労働契約法
  • 雇用対策法

以前からあったこれらの8つの法律を、働く人々が事情に応じて多様な働き方を選択できるように改正したものを『働き方改革』と言います。正式名称は働き方改革関連法と言います。

働き方改革を始めたきっかけ

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働き方改革がどんな概要なのかがわかったところで、次にどうして働き方改革をするのか、働き方改革が始まったきっかけについてご説明します。

労働人口の減少

みなさんご存知の通り、日本は少子高齢化が急速に進んでいます。

少子高齢化が進み、総人口が減るとなると労働者の主力と言われている労働力人口(15歳〜64歳)は当たり前ですが減っていきますよね。

長時間労働など労働環境の悪化に対して、育児をする主婦の方や、家族の介護をしている方など、事情がある方達が働ける環境が窮屈になってきているのもまた現状です。

総務省が公表した「第1部 特集 ICTがもたらす世界規模でのパラダイムシフト」によれば、2010年には23.0%だった65歳以上の人口は2060年予測では39.9%に増加。15~64歳の生産年齢人口は2013年10月時点では7,901万人でしたが、2060年には4,418万人まで減少すると予測されています。

うした日本の未来の危機的状況を変えるべく、働き方改革が施行されました。

改革の目的

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働き方改革の目的は、前述した通り、働く人々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現することです。

それを実現するために、具体的な目的を3つにまとめました。

  • 労働者を増やす
  • 出生率を上げる
  • 生産性を上げる

    それぞれの詳しい解説は以下の通りです。

    労働者を増やす

    今の日本の現状から、そもそもの働ける人を増やす必要がありますよね。これまで、労働できるのに事情によって機会がなかった方々へ労働の場を提供することが目的です。

    例えば家事や育児でなかなか働く時間が確保できていない方に向けて働きやすい環境を整備することや、高齢者の方々が働けるような環境を用意することです。

    出生率を上げる

    子育て支援や補助金などを充実させることによって、出産、子育てがしやすい環境を整備します。それによって子育て時の孤独感、不安感を解消し、政府と国民によって協力し、出生率をあげます。

    生産性を上げる

    日本の総人口、労働人口の減少に伴ってさまざまな政策を行っていますが、すぐに人口が増えるわけではありませんし、必ず増えるとも限りません。

    そんな時に、一人一人の労働生産性を少しでも上げることができれば、限られた労働人口の中でも経済を活発にすることができます。

    具体的な施策を紹介

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    働き方改革の概要と、目的やきっかけがわかってきたところで、実際に行われている働き方改革の具体的な施策を紹介していきます。

    時間外労働の上限規制

    働きすぎを防ぐことを目的にこの規制が導入されました。

    • 原則として時間外労働の条件は月に45時間、年で360時間までとする
    • 特別な事情がない限り上限を超えてはならない

    企業側がこれを違反すると6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が課される可能性があります。

    有給休暇取得の義務化

    年間10日以上の有給休暇がある労働者に対して年間5日以上の有給休暇を取得させることが義務となります。

    企業側がこれを違反すると、30万円以下の罰金が課される可能性があります。

    皆さんに一番馴染みのある施策はこの有給に関する施策なのではないでしょうか。働き方改革の一番話題になったポイントとして有名ですね。ぜひここは押さえておいてください。

    『勤務間インターバル制度』の導入促進

    働きすぎを防ぐことを目的として、前日の就業時刻と翌日の始業時刻の間に一定のインターバルを確保しなければいけない、という制度です。

    労働者に十分な生活の時間や、睡眠時間の確保を目的とした制度ですが、こちらは努力義務であり強制ではありません。しかしこの制度の導入=ホワイト企業という印象があるため、最近では導入する企業が相次いでいます。

    産業医・産業保健機能の強化

    50人以上の事業所を対象に、衛生委員会や産業医に対して従業員の健康管理に必要な情報を提供することが義務付けられました。

    これにより、中小企業による従業員への健康診断の実施などの体制が整いつつあります。

    『高度プロフェッショナル制度』の導入

    柔軟な働き方を可能にすることを目的に、高度な専門知識を持ち、専門的な職務に就き年収が一定以上の労働者に対して、労働基準法の規定に縛られない自由な働き方を認める制度です。

    自由とはいえ、年間104日以上かつ、月に4日以上の休日の確保や、健康管理の状況に応じた健康・福祉確保措置が義務付けられています。

    正規雇用と非正規雇用の格差是正

    日本の労働者の4割を占める非正規労働者は、時給換算した時の賃金が正規労働者に比べて6割ほどだと言われています。

    家事・育児・介護などの負担がある女性を中心とした主婦層の方たちは、拘束時間などの規制が強い傾向にあった正規雇用を当然拒みます。結果として非正規雇用となり、100%の生産性を発揮できていない状況です。

    そこで、格差を是正し、正規雇用(正社員)と非正規雇用(非正社員)に関して、同一の労働をした場合は同一の賃金を支払うことを義務とすることで、非正規雇用の方でも気持ちよく働ける環境を整えることができます。

    非正規雇用の方の待遇面を改善すべく、時給換算時の賃金を最低1,000円にする、正社員に対して6割の現状から8割まで引き上げる、非正規雇用者の正社員移行などさまざまな方法から格差是正に努めています。

    中小企業への割増賃金率の猶予措置の廃止

    現在の制度では、月60時間以上の時間外労働に対して50%の割増賃金を支払うことに関して、中小企業に対する割増賃金の引き上げが猶予され、60時間を超える分も25%以上に据え置きをされていましたが、この猶予が廃止され、2023年4月からは中小企業でも割増賃金が50%以上になります。

    労働時間の客観的な把握

    働きすぎを防ぐことを目的として、会社の全ての従業員の労働の状況を客観的に把握することが義務付けられました。

    これにより、実はこの会社『ブラック企業なんじゃないか…。』と後々気づくような事態を防ぐことができます。

    フレックスタイム制の清算期間の見直し

    こちらの言葉も、働き方改革が始まってからよく耳にする単語ではないでしょうか。フレックスタイム制とは、総労働時間には変化がなく、始業の時間と終業の時間を自分の都合に合わせて調整できる制度です。

    一ヶ月の中で調整して自分のシフトを組むような形で行われていましたが、その清算期間が三ヶ月に延長され、より調整がしやすい環境になってきています。

    以前からあった制度ですが、働き方改革の施行と、新型コロナウイルスの感染拡大によりフレックスタイム制を導入する企業は増えてきています。

    不合理な待遇差の禁止

    正社員、パート、アルバイト等、雇用形態に関わらない公正な待遇を確保するための決まりです。

    中小企業に対しても、2021年4月1日より施行されます。

    労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

    こちらも上記の『不合理な待遇差の禁止』と同様に、公正な待遇を確保するための決まりで、中小企業に対しても2021年4月から施行されます。

    企業への不平・不満等が出ることを防ぐため、待遇に関して双方合意のもと、就労することが義務となります。

    行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争手続(行政ADR)の規定の整備

    こちらも上記の『不合理な待遇差の禁止』と同様に、公正な待遇を確保するための決まりで、中小企業に対しても2021年4月から施行されます。

    働き方改革によるメリットとデメリット

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    大きな改革を行う上では、メリット、デメリットは必然と出てきてしまうものです。働き方改革を行なった上でのメリットとデメリットを、経営する会社目線と、働く労働者目線で考えてみましょう。

    会社にとってのメリット

    • 長時間労働が是正され、短時間で成果を出すことができるので人件費のコストカットに繋がる。
    • 勤務時間短縮により、一人一人の生産性向上が見込める
    • 会社の印象がよくなり、人材採用の面で活きる
    • 労働者にとってのメリット
    • 労働時間短縮によって、身体と心に余裕が生まれる
    • 短時間で集中し、いい成果を生みやすくなる
    • 残業が減り、時間を上手く使えるようになる
    • 働き方に自由度が増える

    会社にとってのデメリット

    • 勤務時間に上限が設けられることで、決められたタスクをこなせない場合がある
    • 生産性が上がらない場合は、ただ利益が下がるだけになってしまう
    • 多様な労働環境の変化に伴い、ツールや備品等新たなコストが発生する
    • 一人一人の労働時間が減った分、新たな人材を確保しなければならない場合がある

    従業員にとってのデメリット

    • 残業手当がなくなり、給料が減ってしまう
    • 質より量、速さを意識してしまい、仕事が雑になる可能性がある
    • 短時間で成果が求められるため、能力のない社員は切り捨てられてしまう可能性がある

    いかがでしょうか?それぞれの目線でメリット・デメリットを説明しましたが、自分の状況に当てはめてみましょう。メリットばかりに目が行きがちですが、冷静になってデメリットも含め考える必要がありますね。

    しかし、会社、労働者どちらのデメリットも、メリットでカバーリングできたり、時間が解決してくれるものだったりと、そこまで悲観するものではありませんので、参考にしてみてください。

    実際に導入している企業の声

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    ここで、実際に働き方改革を導入している企業の声を紹介します。

    味の素株式会社

    『七時間で新たな価値を創造する会社』をスローガンとしていて、常に試行錯誤をしながら、特に女性社員が働きやすい環境作りに尽力し、成功を収めています。

    ヤフー株式会社

    『才能と情熱を解き放つ』ための改革を重ねている企業です。会社と社員が幸せになること、収益を上げることを考えて次々と新しいものを取り入れ、その結果今このような素晴らしい会社になっています。

    人事評価制度の見直しを行い、一人一人の貢献を評価するマネジメント術の先駆者となる企業です。

    東日本電信電話株式会社

    時間外労働を夜から朝にシフトし、在宅勤務を積極的に取り入れた結果、残業時間が13%減少し、残業時間が45時間を超える社員が34%減少したという結果が出ています。

    SCSK株式会社

    残業代として支給していたお金をインセンティブとして支給することにシフトした結果、残業時間を20%カット、有休消化率100%の社員にはさらにインセンティブ支給とすることにより、残業削減、有給消化率と二つの課題を改善することに成功しています。

    まとめ

    今さら聞けない働き方改革について、わかりやすく説明してきましたが、参考になりましたか?

    働きすぎる国日本を変えていくべく、働き方改革という大きな改革が現在行われています。

    デメリットも説明しましたが、最後に紹介したように企業にも、社員にもメリットがたくさんあるのがこの改革です。今までのやり方を根本から変え、しかも自分だけではなく組織で足並みを揃えてやるというのは簡単なことではありません。

    この記事で少しでも働き方改革についての知識を深めて、皆さんの今後の生活に役立ててみてください。

    また、最近は観光と仕事をかけ合わせたワーケーションも注目されており、地方自治体がワーケーション目的で訪れる労働者に対する補助・支援を用意しているケースもあります。

    ニューノーマルな時代に向けた働き方改革にも注目していきましょう。

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