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特集記事 2023.02.21
特集記事
2021.03.05
2020年4月に新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急事態宣言の発令に伴い、急速に進んだリモートワークですが、その中でもニューノーマルな働き方として注目を集めているのがワーケーションです。
ワーケーションとは、仕事と休暇を組み合わせた造語です。つまり、リゾート地や帰省先などの自宅以外の休暇先でリモートワークを行う過ごし方のことです。
自宅やカフェなどで仕事をするリモートワークは、会社とは違う場所で仕事をすることですが、ワーケーションは仕事を終えたら温泉に入ったり、地元の食材を生かした料理を食べたりと休暇を楽しむことができるため、旅行の合間に仕事をするという部分が2つの働き方の大きな違いです。
全国の20~69歳の就業者4342名を対象にインターネット上で行われた調査によると、ワーケーションという言葉を認知している方は7割超、言葉すら知らないという方は3割弱という結果となりました。
そして、実際にワーケーションを実施したことのある方は7.4%、導入している企業は10.2%といずれも全体の1割程度にとどまりました。
このように、ワーケーションは認知度は以前よりも高まってはいるが、実際に導入している企業、実施したことがある方は非常に少ないということになります。
しかしながら、ワーケーションに興味があるという企業の経営者は非常に多く、約半数の経営者がワーケーション制度を自社で導入することを考えているようです。
企業側が持つ、リモートワークを発展的に継続できる可能性があれば試してみたい、魅力的な人事制度を組み立てたいという考えがワーケーションの実施を検討する理由になったようです。
そこで本記事では、実際にワーケーションを導入している5つの企業と必要な準備、そしてワーケーションを実施する際の2つのポイントをご紹介します。ワーケーションの導入をお考えの企業の方はぜひ参考にしてみてくださいね。
日本でワーケーションが本格的に実施されるようになったのは2017年頃からで、2019年、2020年にはいくつかの企業や自治体で取り入れられるようになってきました。
ワーケーションはリモートワークと同様に、通勤せずに就業時間や場所を柔軟に選べることがメリットですが、それと同時に新型コロナウイルス感染拡大により、都市部以外の地方で働くことで人との密集を避けられるのもワーケーションの魅力です。
では、ワーケーションを実施している企業はどのように制度を導入しているのでしょうか。ここでは、ワーケーションを実際に導入している企業を5つご紹介します。
日本におけるワーケーションのパイオニアである日本航空(JAL)は、ワークスタイル変革の一環として2017年からワーケーション制度を導入しています。
日本航空では、ワーケーションを社内に浸透させるために以下のような対策を行いました。
このような取り組みによってワーケーションを利用する社員が増加。ワーケーションを始めた2017年の夏季推奨期間では11名であった利用者が、翌年には78名、2018年には年間利用者が延べ174名になりました。
ワーケーションの効果検証実験も行っており、2020年6~7月には株式会社NTTデータ経営研究所、株式会社JTBとともに、慶應義塾大学の島津明人教授の監修のもと、沖縄県のカヌチャリゾートで検証を行っています。
その結果、ワーケーション期間中に仕事の生産性が20.7%上昇、仕事のストレスは37.3%減少、活動量が2倍程度増加しました。さらに、それぞれの結果はワーケーション終了後5日間続き、生産性や心身の健康にポジティブな成果が見られたと報告されています。
ユニリーバ・ジャパンは、社員が積極的にワーケーションを利用できるよう、北海道下川町、宮城県女川町、山形県酒田市、静岡県掛川市、山口県長門市、宮崎県新富町の全国6つの自治体と連携し、「地域 de WAA」と名付けたユニリーバ式ワーケーションを導入しました。
「地域 de WAA」はユニリーバが地方自治体と連携し、その地域の施設をコワーキングスペースとして社員が無料で利用でき、現地では地域のイベントやアクティビティに参加することができます。
また、自治体の指定する地域課題解決に関わる活動に参加することで、提携している宿泊施設が無料または割引となります。
普段とは違う場所、環境で地元の人々と交流するとともに、ユニリーバと自治体の双方がそれぞれの強みや経験を生かし、地域に根付いた新しい活用法やビジネスモデルを生み出していくこと、そして社員ひとりひとりの心身、社会的な健康の向上を目指しています。
野村綜合研究所では、心身のリフレッシュと新しいアイデアの萌芽を期待して徳島県三好市で定期的にワーケーションを実施しています。普段都心で働いているシステム技術者から希望者を募集し、5名前後が2週間程度滞在します。
徳島県三好市にあるレンタルオフィスは、築100年以上の古民家を改装したもので、通常の業務のほかに新しいプロジェクトの立案など創造性が求められる仕事を行う社員が多いといいます。
社員の間では、ワーケーションに参加することで集中してじっくりと考えられるため、新しい発想が浮かびやすいと好評のようです。
東京都新宿区にオフィスを構えるセルプロモート(株)では、温泉に浸かりながら仕事が出来るIT会社を目指し、箱根でのワーケーションを実施しました。
実施したのはワーケーションに最適と噂される箱根つたや旅館で、ワークスペースやWi-Fiも完備されています。リモートでのミーティングなどを行い、その後は地元の美味しいカレー屋さんでランチタイムなど、メリハリのあるワーケーションを過ごせるようです。
株式会社キャップドゥでは、社長自らが3ヶ月におよぶ長期ワーケーションを実践しています。鹿児島県指宿市でのワーケーションでは、始めてから2ヶ月目までは主に観光を楽しむことがメインでしたが、3ヶ月目に入ると、指宿市の歴史や文化に触れる機会が増え、指宿市と熊本県人吉市が姉妹都市であることを知るなど、地元への理解に繋がりました。
また、長期滞在のメリットとして、鹿児島県のことを人に紹介できるほど知りたいという考えが沸き、鹿児島の色々な場所へ足を運び、魅力を再発見していこうと思ったそうです。
ワーケーション中の仕事については、3ヶ月間変わりなく生産性がアップし、ワーケーションによって生産性が下がるという懸念も完全に払拭。むしろワーケーションという大規模な気分転換によって、以前にも増して仕事へのモチベーションが高まると感じたようです。
ワーケーションについてもっと詳しく知りたいという方は、株式会社キャップドゥに問い合わせてみてはいかがでしょうか。
休暇と仕事を組み合わせた働き方ができるワーケーションですが、日本でも働き方改革や社員の満足度向上のために採用する企業も増えてきています。
上記ではワーケーションを実際に導入している企業をご紹介しましたが、いざ自社で取り入れようと思っても、何を準備したら良いのかわからないという方もいるのではないでしょうか。
ここでは、ワーケーション導入に必要な準備をご紹介します。
まずはじめに行うべきことは、ワーケーション導入範囲の設定ですが具体的にはどのようなことを決めれば良いのでしょうか。
ワーケーションに適しているのは、リモートワークが行えるデスクワークです。リモートでもスムーズにコミュニケーションが取れるような業務や部署を最初にワーケーションの対象にすると始めやすく、準備もスムーズに行えます。
時期に関しては、まずは夏季休暇や閑散期のみに設定するなど、万が一トラブルがあった場合でも影響の出にくい時期に実施するのが良いでしょう。
就業規則に関しては、ワーケーションで行える業務の範囲や、取得日数、ワーケーション中の禁止事項など、基本的な規則を整備することが必須となります。
また、ワーケーションを許可制にする場合には、申請方法や決算に関して、ワーケーション中の承認フロー、経費の負担などについても通常の業務とは分けて設定しておく必要があります。
そして就業規則を設定したら必ず全社員に周知し、必要であればワーケーション中の就業規則の説明会を実施しましょう。
ワーケーションを実施する際の企業側のデメリットとして、社員の就業時間が把握できないという点があります。
旅行先であっても、1日のうちで仕事をした時間をカウントする必要があるため、ワーケーション中に使用するタイムカードやパソコンのログ、または出退勤の報告ルールを決め、就業時間を記録できる体制を整える必要があります。
また、就業時間管理体制を確立することで、休暇中の長時間の労働も防ぐことができます。ワーケーションは休暇が前提にも関わらず、仕事ばかりになってしまう事態になっては本末転倒です。社員から不満が出てしまわないよう、しっかりと就業時間に関する決まりを作っておきましょう。
ワーケーションは国内外のどんな場所でも実施できる働き方ですが、リモートワークや在宅勤務と比較するとデバイスの管理やネットワークセキュリティ、資料の持ち出しなどでの紛失や盗難、破損などのリスクが問題となります。
そのため、ワーケーションを実施する際には資料の持ち出しに関してはルールの設定や、万が一の情報漏洩やウイルス感染のリスクに備えたセキュリティソフトのインストールなどの対策を行っておく必要があります。
ワーケーションでは、働く場所だけではなく働く時間も社員によって違ってくるため、ひとりひとりに合わせた評価制度が必要です。
数字で結果が出やすい営業などの部署は評価しやすいですが、バックオフィス業務などの成果が見えにくいような業務を行う部署では、リモートワークでの評価がしにくい傾向にあります。
このように、評価しにくい部署の方がワーケーションを実施する際は以下のようなことを決めておく必要があります。
ワーケーションで異なる部署の評価を行うには、リモートワークに対応した評価制度の設定が欠かせません。ワーケーションを実施する前には必ず、リモートワークに適したマネジメントや評価制度を整えておくようにしましょう。
企業がワーケーションを導入することは、社員だけではなく企業、受け入れ先の自治体など、関係するさまざまな方にメリットがありますが、ワーケーションの今後については、以下の2つのポイントを押さえつつ実施する必要があります。
2020年7月に、当時の菅官房長官が観光戦略実行推進会議で、感染対策を行ったうえでワーケーションの普及に取り組む姿勢を示しました。
この会議のあとSNSでは、休みの日まで働きたくない、本当に仕事をしているのか、上司になんて言われるかを考えたらなかなかワーケーションを利用できない、などワーケーションについて否定的な意見がたくさん見られました。
しかし、その反対にワーケーションをすでに経験したことのある方からは、ワーケーションは仕事の生産性が上がるおすすめの働き方なのに、否定的な考え方の人が増えて残念だという意見も見られました。
そのため、ワーケーションの実施を検討している企業は、仕事と休暇の線引きについて社員にしっかりとした考え方をレクチャーする必要があります。
2019年11月に、全国65の自治体が集まったワーケーション自治体協議会が設立されました。1道6県58自治体がワーケーションに興味のある自治体を可視化することで、ワーケーションを実施する企業に対して情報を発信、誘致に向けた活動を行っています。
ワーケーションを実施する際は、地方自治体との連携が非常に大切です。地方自治体と連携をすることで、コワーキングスペースの無料利用や地元の活動への参加など、企業の方針に沿ってさらに柔軟なワーケーションプランの導入が可能になります。
実際にワーケーションを導入している5つの企業と必要な準備、そしてワーケーションを実施する際の2つのポイントをご紹介しましたが、参考になりましたでしょうか。
ワーケーションの導入にあたっては、企業側は社員のワークライフバランスについての意識を高めたり、就業時間や費用、労災などのマネジメントをするために就労規則を変更、設定したりする必要があります。
しかし、これらの準備を越えることができれば、これからワーケーションはますます普及していく可能性があり、新しい働き方として定着していくでしょう。
適切な環境を整えたうえでワーケーションを導入することで、社員の仕事への意識などを変えるいい機会になり得るのです。
ワーケーションの導入を検討している企業担当者、経営者の方はぜひ本記事を参考にしてみてくださいね。
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