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特集記事 2023.02.21
特集記事
2021.03.06
政府は2014年に発表された地方創生計画で、東京一極集中の是正の目的から、企業の地方への本社移転を促してきました。
この計画では当初、2020年までに地方と1都3県の人口転出入の均等化を目標の1つとして定めていましたが、実際2019年に本社移転を行った企業は全国で2011社で、東京圏への転入企業は312社、転出企業は246社と、2011年以降9年連続で転入超過という結果になっています。
地方創生のための大きな柱として注目されている企業の本社の地方移転ですが、このように実際のところ進んでいないという現状があります。
新型コロナウイルスの影響を受けて、テレワークの導入が進んだ2020年以降は、さらに地方移転への関心が高まっていますが、今後企業の地方移転を成功させるためには企業としてどのようなポイントに気を付けるべきなのでしょうか?
この記事では、企業の地方移転が進まない理由と成功させるポイント、地方移転の事例をご紹介します。
地方移転を検討しているという企業の担当者の方は、是非参考にしてみて下さい。
地方創生とは、人口流出が止まらない地方に企業が移転することによって、地方への人の流れを作り、地方を活性化させることによって国全体の人口減少を食い止めるというものです。
企業の地方移転は東京一極集中を是正するために非常に重要な施策と言えます。
まずは、企業の地方移転が進まない理由をご紹介します。
企業の本社を移転するということは、設備機器の移動や登記変更、社員の異動などさまざまなコストがかかり、手続きも多く発生します。
従業員数が多い大企業ほどこのコストは多く発生するため、計画的に進める必要があり、移転する方がメリットがあるとわかっていてもなかなか踏み切れないという企業も少なくありません。
コスト面と同等に大きな問題となるのが、従業員の異動についてです。本社機能を移転するにあたり、当然ですが従業員の大規模な異動が発生します。
地方で暮らせることに魅力を感じる方がいる一方で、さまざまな理由で都心での生活から離れられないという方も出てくるでしょう。
これまで生活してきた状況を変えるということは、特に家族のいる方にとって容易ではありません。共働きの家庭、子供の学校の問題など、暮らす場所をそう簡単には変えられないという方も多いのです。
従業員が移住に前向きではないという場合は、無理に本社を地方に移転させることは難しくなります。
都心にオフィスが集中しているということは、取引先も都心にある場合が多いということです。そのため、取引先と物理的に離れてしまうことを懸念して地方移転を諦めざるを得ないという企業も少なくありません。
テレワークやさまざまな機能のオンライン化が進むなかでも、打合せや商談はどうしても顔を見て行いたいと考える方が非常に多く、まだまだ完全に全てをオンライン化できていないという企業はこのような問題を抱えています。
人が集中している都心と比べれば、地方での新規採用は非常に難航すると言えます。特に若者の流出が激しい地域では、より採用が困難になり人材が集まりにくいという厳しさがあります。
総務省が発表している「住民基本台帳人口移動報告」によると、2019年は東京都への転入者が46万6849人、神奈川県への転入者が23万7890人となっていて、まだまだ都心への人の転入は増加傾向にあります。
しかし、このデータに関しては2020年以降のコロナウイルス感染拡大によって、少しずつ変化も見られるという状況でもあります。
企業の地方移転が進まない理由をご紹介しましたが、それぞれの問題を解決しつつ、東京一極集中のリスクを回避しなければ地方創生は進まず、人口の減少や首都直下型地震のような災害が起きたときの被害は計り知れません。
そこで、ここからは企業の地方移転を成功させるために企業で取り組むべきことを詳しくご紹介していきます。
本社移転にかかる費用は、自治体の補助制度を利用することである程度まかなえる可能性もあります。例えば、熊本県では「企業本社機能立地促進補助制度」として以下の補助を行っています。
補助要件 | 限度額 | 主な補助対象経費及び補助金額 |
投資額3,000万円以上、かつ新規雇用者数50人以上 | 50億円 | ・固定資産投資額及びリース資産額の合計10% |
熊本県企業本社機能立地促進制度は、県内に本社機能を移転する際に使える制度で、地方創生期間とされている令和4年の3月31日までの期間限定となります。
このような自治体の補助制度を利用することによって、補助金を使ってコストを削減することができます。
さらに、補助金制度によって社員の移住の際の費用や移住先での家賃なども支援される自治体も多くあり、熊本県球磨郡錦町では「錦町空き家住宅リフォーム補助金」や「錦町移住促進取得費等補助金」「錦町引越費用補助金」といった、引越しから住宅の補助までを手厚く行っています。
詳しくは「熊本県球磨郡錦町定住・移住応援サイト にしきで暮らさんね?」で確認することが可能です。
このような自治体ごとに行われている支援は地域によってさまざまなので、制度を使うことによってコストを抑えたり、従業員の移住の問題を解決させたりすることができます。
各企業で進められているオンライン化ですが、実は会議だけではなく商談や採用面接もオンライン化することは可能です。
対面で商談や面接を進めたいという方が多い現状ではありますが、新型コロナウイルス感染防止のためにも企業としてオンライン化を推進すべきという社会の動きもあります。
テレワークを含めた業務のオンライン化の動きは、新型コロナウイルスの感染拡大が収束したとしても推進されていくだろうと言われていて、さまざまなツールも存在します。
実際商談をオンラインで行うことで、スケジュール調整や移動時間、交通費の削減にも繋がるので、うまくオンライン化を進めることが重要です。
人が集まる都心に比べると、地方での新規採用は困難になります。しかし、地方での新規採用を成功させるポイントもあります。
まずは、地域住民に認知してもらうことや、企業としての取り組みをアピールするために、地域創生の重要性やビジョンを求職者に知ってもらえるよう、求人広告などの原稿作りは念入りに行いましょう。
さらに、近隣の大学や専門学校との連携をとり、在学生へのアプローチをかけることも重要になってきます。
また、重要なカギとなるのは全国各地からの採用です。UIJターンによって就職活動、転職活動をしているという方に向けた魅力的な求人を打ち出すことが必要になります。
例えば、面接の際の交通費の負担や入社に伴う転勤費用の負担など、求職者にいかに歩み寄るかが非常に重要なポイントとなります。
全体的に見ると進んでいないように見えてしまう企業の地方移転ですが、徐々に地方への移転を行っている企業が増えていることも確かです。
地方移転を成功させているのは一体どのような企業なのでしょうか?ここからは、企業の地方移転事例をご紹介します。
株式会社 Lboseは、2020年3月に東京都渋谷区のオフィスを熊本県熊本市に移転しました。
創業時からリモートワーク中心の組織だったことから、コロナ禍における東京本社の必要性を考えた結果、東京に本社があることのメリットが感じられなかったり、地域への貢献や課題解決をしたいという思いから、熊本市への移転を決めたというLbose。
プロジェクトメンバー募集サービス「TEAMKIT」の開発運営をしている会社で、熊本で事業拡大をするとともに、熊本の地域の課題などに取り組んでいくということです。
茶類販売大手のルピシアは、2020年7月に本社の機能を食品工場のあるニセコ町に変更し、グループ会社2社も同時に移転をしたということです。
東京から社員20~30人が異動することで、従業員100名態勢で運営していくといいます。コロナ禍やBCP対策において、東京に業務を集中するリスクが高いという考えや、テレワークが進むなかで、本社の移転をしても場所を問わずに働ける環境が整ったことから移転を決意しました。
ニセコ町の町長からも、雇用の場や地域の価値向上にもつながると歓迎されていて、創業者の水口博喜会長兼社長も自らが町内に移住しています。
温泉レジャー施設である「スパリゾートハワイアンズ」を運営する常磐興産は、2021年3月までに東京都の本社を廃止し、福島県いわき市の施設敷地内に移転させるということです。
さまざまなCSR活動を積極的に行っており、社会貢献度も非常に高いことで知られる常磐興産は、コロナ禍に伴う施設利用者の減少をきっかけに、業務の効率化と経費削減を図り、本社機能を福島県いわき市に移転することを決定しました。
東京都中央区に本社を構えていた常磐興産ですが、首都圏の営業活動はリモートでも可能との判断から各機能を段階的にいわき市へ移すことで、業務効率の向上を図ります。
個性あふれるクラフトビールを世界へ向けて発信するFar Yeast Brewingは、2020年10月から本社機能を東京都渋谷区から自社工場のある山梨県小菅村に移転しました。
新型コロナウイルスの感染拡大によって浸透したリモートワークや、元々取り組んでいた会議や情報共有のオンライン化によって、本社機能を小菅村に移しても業務に支障がでないと判断し、都内の事務所家賃の固定費の削減や、多様な働き方が可能になる環境を整えるために移転を決意したといいます。
今後は、今までも行っていた地域と連動した活動の強化とともに、地域住民の雇用、移住促進に積極的に取り組んでいくということです。
情報サービス会社としてコンピューターシステムの運営と管理、ソフトウェア開発などを手がけるインフォメーション・ディベロプメントは、2020年10月から本社機能の一部を鳥取県米子市に移転させました。
新型コロナウイルスの感染拡大に対応した業務改革の一環で、リモートでもできる営業や事務、総務業務などを移転させ、今後地元からの雇用を中心に5年間で約40人の従業員を増やす予定です。
都市部に比べて新型コロナウイルスの感染者が少ないことや、自然災害が比較的少ないことが移転先の決め手になったとのことです。
企業の地方移転が進まない理由と成功させるポイント、地方移転の事例をご紹介しましたが、参考になりましたか?
地方への企業移転が進まない理由は、コスト面、従業員の移住、取引先との関係、新規採用の難しさなどさまざまな理由がありますが、その問題は補助金を使うことや社内のシステムを確立させることで補うことができます。
実際に、新型コロナウイルスの影響によって2020年以降は各企業でテレワークが増え、オンライン化が急速に進んだことをきっかけに、以前から問題となっていた東京一極集中を避けるためにも、本社の移転を検討する企業が増えています。
補助金はご紹介した熊本県のように、地方創生期間とされる令和4年3月までという自治体もあるため、この機会に補助金を利用した移転を検討するべきと言えます。
地方創生は国の今後を左右する重要な施策で、地方が活性化し、人の流れができることによって東京一極集中を是正し、人口の減少を食い止めることに繋がっていきます。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、テレワークやオンライン化に取り組み始めたという企業も非常に多く、その動きは今後も加速してきます。
テレワークやオンライン化で東京にオフィスを構える必要性がなくなっていると感じている方も多く、今後の都心にある企業の地方移転には注目する必要があります。
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