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特集記事 2023.02.21
特集記事
2021.03.02
企業がサテライトオフィスを地方に設立する動きを加速させるなかで、本社の機能を地方に移転するという動きにも注目が集まっています。
人材派遣会社のパソナグループが本社機能を淡路島に移したというニュースは、一般の方にも知れ渡るほど世間からの関心が集まる内容でした。
パソナグループは2024年までに従業員1200人を淡路島に異動させるという計画を発表し、着手しているといいます。
大手企業が動き出したことで関心が高まっている本社機能の地方移転には、一体どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
この記事では、企業が地方に移転するメリット、デメリットとともに、企業の地方移転が推進される背景をご紹介します。
本社機能を地方に移転したいと考えている企業担当者の方は、是非参考にしてみて下さい。
冒頭でお伝えしたパソナグループ以外にも、芸能プロダクション大手のアミューズが富士山麓への移転を計画しているなど、大手企業が動き出したことで、どのようなメリットを感じることができるのかと考えている方も多いのではないでしょうか。
まずは、企業が地方に移転するメリットをご紹介します。
地方は都心に比べてオフィスの賃料が安いので、賃料として発生していた固定費を大幅に削減することができます。さらに、オフィスを移転することによって、自治体からさまざまな支援を受けることも可能です。
熊本県では「熊本県企業本社機能立地促進補助制度」によって、以下の補助金を受け取ることができます。
補助要件 | 限度額 | 主な補助対象経費および補助金額 |
投資額3,000万円以上、かつ新規雇用者数50人以上 | 50億円 | ・固定資産投資額及びリース資産額の合計10% |
熊本県内に本社機能の一部や研究所、研修所などの移転を行う企業に対する補助制度で、この制度を使うことによって、賃料や通信費、雇用に関わる費用が大きく変わります。
その他の自治体においていも、地方創生の一環として補助金制度を取り入れている自治体は数多く存在します。
固定費を削減することによって従業員への福利厚生を手厚くするなど、他の事に経費を使うことが可能になります。
地方に本社を移転することによって、社員の移住も考える必要がありますが、地方で仕事をすることで社員のワークライフバランスは大きく向上すると考えられます。
自然豊かな環境の中でモチベーションの向上や、満員電車での通勤がなくなり通勤時間も快適なものに変わります。
さらに本社近くに移住先を決めることで、通勤時間が短くなり、仕事や趣味に割く時間が増えることに繋がります。
都心での生活は、満員電車はもちろんのこと、人混みや車の行き交いなど、ストレスを抱えながら生活しているという方も多くいます。
地方では都心で感じていたようなストレスを感じることなく、ゆったりとした時間の流れの中で社員自身が自分に合った働き方を構築することが可能です。
BCP対策とは「災害など、緊急事態が起きた際に被害を最小限に抑え、事業を継続できる仕組みの準備」のことを指します。
BCP対策が企業にとって必要だとされた背景には、東日本大震災での想定外の甚大な被害による復旧の遅れが教訓となっています。
東日本大震災での被害は、震源地近くである福島県や宮城県だけではなく、東京においても計画停電などによりオフィス機能が停止するということにまで及びました。
そのときの教訓を活かし、大手企業を中心にBCP対策には取り組み中、もしくは策定中という企業が多く、BCP対策をしっかり行っている企業こそ取引先として信頼できると考えている方もいます。
例えば、営業活動は東京をメインで行い、総務や経理といった本社機能は地方にあるという形をとれば、災害時に会社の業務を止めることなくリスクを分散させることができます。
地方への本社移転は、後述する国が取り組んでいる施策である地方創生に大きく貢献することになります。
社会貢献は企業が存続していくにあたり非常に重要なことの1つで、取引先や顧客は、この企業はどのような社会問題に取り組んでいるのか?ということを重要視している場合もあります。
地方移転によって企業のイメージがアップすることで、その後の成長への期待から商談が成立しやすくなるということも考えられます。
地方への移転は企業にとってさまざまなメリットがありますが、一方で本社機能を地方に移動させることで起こるデメリットも挙げられます。
ここからは、企業が地方移転するデメリットをご紹介します。
東京一極集中という現状が問題となっていますが、日本では政治、経済、文化、人口など社会における資本、資源、活動が首都圏に集中しているという状況です。
そのことからもわかるように、取引先の多くは首都圏にあるため、取引先と物理的に離れてしまうことを懸念して地方移転に二の足を踏んでいる企業は非常に多いと言えます。
新型コロナウイルスの感染拡大防止対策として、オンラインでの打合せや商談も増えていますが、直接顔を合わせて打合せをしたい、商談をするのにオンラインでは相手の表情がわかりにくいなど、まだまだすべての業務をオンライン化するのは難しいと言えます。
そのため、取引先との関係が悪化してしまうのでは、との思いから地方移住に踏み切れないという企業が多く存在します。
都心部には人口も集中しているため、企業にとって新規採用をしやすい状況にあると言えます。
地方への移住やUIJターンが盛んに行われるようになったとはいえ、まだまだ労働人口は都心に流出しているというのが現状です。
現地での採用を考えて地方移転をする場合は特に、大学や専門学校が多い地域や、人口の多い地域を選ぶということも重要になります。
飛行機や新幹線なども含めた公共の交通機関でのアクセスが良い都心に比べると、地方では車中心の生活となることからもわかるように、公共交通機関でのアクセスが悪い場合があります。
空港すら不便な場所に作られているということも少なくないので、社員の出張や来客時に交通の便が悪いことはデメリットとなります。
上記のようなデメリットがあることから、結果的に本社を地方に移動しても、都心にサテライトオフィスを設置する必要があると判断することもあるでしょう。
本社機能を地方へ移動する動きは進んでいるものの、まだまだ都心に本社を構える企業が多いとなると、東京へ頻繁に出張に行くことにもなりかねません。
そうなったときに、営業拠点や社員のワークスペースとして東京にサテライトオフィスを設置することになり、その場所での固定費がかかってしまうことも考えられます。
企業が地方に移転する際のメリットとデメリットをご紹介してきましたが、そもそも本社機能をなぜ地方に移転することが推進されているのでしょうか?
ここからは、本社機能の地方移転が推進される背景をご紹介します。
地方創生とは、2014年に開始された地方活性化を目的とした政策で「まち・ひと・しごと創生本部」が設置され、さまざまな取り組みを行っています。
この取り組みは、地方の人口減少に対して歯止めをかけ、首都圏への人口集中を是正し、地方への人口流出を増やすというものです。
日本では少子高齢化が進み、人口が減少傾向にあります。結果、将来的に働く人の数が減り、国としての生産性が大きく下がることになると予想されていて、そのような状況を食い止めるために、地方の人口減少を防ごうという施策です。
なぜ地方の人口減少を防ぐことが全体の人口減少を防ぐことに繋がるのかというと、現状地方では労働力の中心を担うべき若者が都心へ流出しているという状態で、都市部に人口が集中しているうえに、老年人口も減少しています。地方で始まった人口の減少は、いずれ東京にも広がっていくとされているのです。
そのため相対的に見たときに、地方の人口減少がより深刻化していて、過疎化が進む地方都市もあるなかで、地方創生によって人口の流出を止め、地方都市の経済を活性化することにより人が集まるという流れを作る必要があります
そこで、地方の若者の就業率を上げるために、都心にある企業が地方移転するということにも政府として力を入れていて、記事内でご紹介したような、自治体ごとの補助金制度も充実しているというのが、地方に本社機能を移転させることの背景として大きな理由となります。
地方創生の一環として、各自治体では移住サイトを立ち上げ、移住者を増やすための取り組みを実施しています。
本社の移転と共に問題となるのは、従業員の住居や生活環境の問題ですが、各自治体には住まいや子育て環境、医療環境など、手厚い支援制度が充実しています。
移住をする際にかかる費用や、賃貸、分譲ともに住居にかかる費用など、自治体ごとの助成金制度を利用することが可能です。
例えば、熊本県の芦北町では「芦北町ふるさと寄附金・移住定住特設サイト よしきた!」内に掲載されている空き家の購入や賃貸で改修工事費の50%を支援しています。新築で家を建てたいという方には、町産材を構造上の80%以上使用し、なおかつ町内の建設業者及び製材所を活用して住宅を建設すると、新築200万円、増築50万円が上限で補助金が出ます。
このような補助金制度は、県で行っている場合もあれば、市区町村で行っている場合もあるため、詳しくは自治体の移住サイトを確認してみましょう。
こうした制度は、各自治体で積極的に行われているので、本社が移転する際の従業員の住居の問題も解決できる可能性が大きく、本社の地方移転をするにあたって利用できる制度となります。
新型コロナウイルスが世界的に猛威をふるっている中で、企業の働き方は大きく変化しました。
政府が推奨していたテレワークを取り入れる会社が増え、出勤することによる感染リスクを減らそうという動きが定番化しています。
そのため、接客業など物理的にテレワークが困難な業種以外は、ほとんどの企業でテレワーク制度を導入し、システムの整備などを続けていて、この流れは新型コロナウイルスの感染が終息しても続くと言われています。
そうなると、東京のオフィスは常に人がまばらな状態ということになり、賃料を払っていくことが会社としての無駄な経費となり兼ねません。
ミーティングや基本的な業務だけではなく、商談や採用面接までもがリモート化していて、うまくテレワークを取り入れることができている会社ほど地方への移転を考えているという状況です。
コロナ禍で働き方だけではなく、暮らし方も大きく変わり、地方へ移住したいと考える方も増えたことで、企業の地方移転は現実的なものとなってきています。
企業が地方に移転するメリット、デメリットとともに、企業の地方移転が推進される背景をご紹介しましたが、参考になりましたか?
地方への企業の移転は、メリットがある一方でデメリットも存在しますが、新型コロナウイルスの感染拡大により、そのバランスは崩れてきています。
テレワークが当たり前のように行われていることで、感染の危険性が高い都心にオフィスを展開することのメリットが薄れつつあり、デメリットの方が強く感じるという方が増えています。
地方創生の取り組みによって、企業の移転や社員の移住に対する助成制度が充実しているのも、本社機能を地方に移転する後押しとなります。
移住に積極的な自治体は、子育てや教育に関する支援策も手厚いので、従業員が家族で一緒にのんびりとした地方で過ごすいいきっかけとなるかもしれません。
本社の移転を機に、子育てを地方でしたいと考えている社員が移住を踏み切れるようにもなります。
さまざまなメリットが期待できる地方への移転について、他の企業の動向や各自治体のホームページから支援情報などを確認し、地域や取引先との関係性を考慮しながら慎重に検討してみましょう。
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