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特集記事 2023.02.21
特集記事
2021.03.05
2020年から世界中で大流行した新型コロナウイルスは私たちのライフスタイルに大きな影響を与え、多くの企業が働き方改革を余儀なくされました。
特に大都市圏では本社に出勤せずに在宅やサテライトオフィスで仕事をするリモートワーク(テレワーク)がスタンダードになり、本社機能を地方に移転する働き方改革で経営の安定化を図るケースも見受けられています。
この記事では、企業の地方移転においてどのようなメリットやデメリットがあるのかを詳しく解説していきます。
果たして、地方移転はニューノーマルな時代でビジネスを成功させるために有効な手段となるのか?
この記事を通して、企業の経営課題の解決策を見出していただければ幸いです。
昨今において企業の地方移転が活発になってきた理由は、主に新型コロナウイルスの蔓延による環境の変化があげられます。
地方に本社機能を移転することでコスト削減やさまざまな優遇税制を活用できるというメリットが生まれ、2020年には人材派遣大手の「パソナグループ」が淡路島に本社機能を移転したという大きなニュースも入ってきました。
パソナグループは2024年に向けて従業員約1,200人の異動を目標として掲げており、大企業の地方移転のひとつのモデルケースとして注目を集めています。
実は、企業の地方移転は新型コロナウイルスが流行する前から国をあげて促進しており、2015年には東京から地方移転をする企業を支援する「地方拠点強化税制」も実施されています。
地方拠点強化税制の存在、そして新型コロナウイルスの流行という条件が重なったことでより地方移転が活発になり、今後も中小企業や大企業が大都市圏から自然に囲まれたのどかな地方へ移転するケースは増えると予想されています。
実際に、本社機能を地方に移転した場合にどのようなメリットが生まれるのかを具体的にご紹介していきます。
地方移転になかなか踏み切れない企業の多くは、雇用問題・税金問題の解決策を必要としていますが、国が設けた雇用支援や優遇税制もあるので注目してみてください。
日本国内の人々、そして企業が首都圏に一極集中することを避けるべく、日本政府は2015年に「地方拠点強化税制」を開始しました。
地方拠点強化税制は、東京23区に属する企業(事業計画の認定済)などが対象となる施策であり、東京から地方へ本社機能を移転させることで国からさまざまな支援を受けられるという内容となっています。
地方拠点強化税制では、「オフィス減税」と「雇用促進税制」という2つの支援を受けることができます。
出典元:令和2年度税制改正により、地方拠点強化税制はさらに使いやすくなります。(内閣府地方創生推進事務局)
「オフィス減税」は、東京23区に属する企業が本社機能を地方に移転させた場合、「移転先で施設を新設・増設する際に取得価額に応じて25%の特別償却、または7%の税額控除を受けられる」という税金対策を後押しする内容となっています。
事務所・研究所・研修所が対象となる優遇税制であり、工場や店舗の場合は残念ながら対象外となります。
ただし、業種については営業や製造部門などの特定の部門以外は対象となるため、多種多様な企業がオフィス減税を受けられるようになっています。
地方での新たな雇用獲得を支援する「雇用促進税制」では、雇用の増加数に応じた税額控除を受けられるようになっています。
対象になるのは地方で新たに雇用を獲得した場合、または東京23区から従業員が地方に転勤した場合であり、この制度を受ける場合は正規雇用であることが前提となっています。
初年度においては雇用増加一人当たり「最大90万円」の税額控除があり、3年間の適用期間において一人当たり「最大170万円」まで控除されるという充実した内容となっています。また、前述のオフィス減税との併用も可能となっており、最大120万円まで税額控除が受けられます。
本来、雇用促進税制の適用期間は令和2年3月末までとなっていましたが、令和4年3月末までに延長されています。
要件によって税額控除額は異なりますが、地方で新たな事業をスタートさせる企業は地方拠点強化税制を有効活用したいところです。
企業の地方移転にはさまざまなメリットがありますが、最大のメリットとなるのが「コスト削減」です。
大都市圏にオフィスを構える企業は数千万円以上の家賃を支払っているケースもあり、都会よりも家賃が安い地方にオフィスを構えることで大幅なコスト削減が実現します。
東京23区からの移転の場合は、地方拠点強化税制のオフィス減税による税額控除が受けられるため、イニシャルコストを最大限抑えることが可能となります。
従業員が公共交通機関を利用していた場合、地方移転によって通勤手当や勤務地手当の削減が可能となり、たくさんの従業員数を抱えている企業ほど大きな恩恵を受けることができます。
満員電車に乗って通勤している従業員には心のゆとりが生まれ、仕事に対するモチベーションアップにも繋がります。
地方でパートやアルバイトを採用する場合、都会よりも時給が安い傾向にあるため人件費を削減することができるというメリットが生まれます。
正規雇用の場合は、地方拠点強化税制の雇用促進税制を利用することで一人当たり最大90万円、3年間で最大120万円という大きな税制控除が受けられるため、企業の地方移転における大きな課題となる雇用問題・税金問題を解決に繋げることが可能です。
本社機能の移転は含まれませんが、東京圏以外の道府県、または東京の条件不利地域で起業する場合、以下の条件を満たしていれば最大200万円の起業支援金を受けることができます。
社会的起業を目的とした地方移住をする場合は、最大100万円(単身の場合は60万円)の移住支援金を受けることもできます。
本社機能の地方移転だけではなく、地方で起業する場合も国からの手厚い支援が受けられることを覚えておきましょう。
コロナ対策としてリモートワークを積極的に導入する企業が増えましたが、「働く場所を選ばないなら、温泉があって自然が豊かな地方で働きたい」という人も多く、コロナ対策も兼ねて企業を地方移転させるケースも見受けられます。
リモートワークがスタンダードになった今、都会を離れて地方で家族と一緒に静かに暮らすという選択肢が生まれ、新たなライフスタイルを築ける時代になりました。
企業を受け入れる地方にとっても地方創生・地域活性化を図れるチャンスとなり、Win-Winの関係を築くことができます。
皆さんは自宅から会社までどのくらいの時間をかけて通勤していますか? 総務省は、都道府県ごとに会社までの移動時間(往復)を調査し、全国で最も移動時間が長いのが神奈川県であると報告しています。
最長の神奈川県と最短の大分県では約50分の差がありますが、毎日仕事で忙しくされている方にとっては50分という時間はとても貴重なものとなります。 地方移住後に従業員の通勤時間が短縮されることで家族と共に過ごせる時間が増え、子育てに力を入れたり余暇を楽しんだり生活様式の改善に繋がることでしょう。
ESG投資は、環境問題への取り組み、地域社会への貢献、資本効率に対する意識の高さなどの観点から企業を分析して投資すること指します。
企業の地方移転は地域経済を活性化し再生に繋げる取り組みと考えられ、ESG投資に繋がる試みであるといえます。 企業の長期的な成長を目指している場合、業績や財務状況だけではなくESG投資に繋がる活動を継続的に行うことが重要になってきます。
地方での人口減少の歯止めとなる雇用創出やこれまでその地域にはなかった事業参入により地域が活性化され、市町村と共に企業も成長を遂げることができます。
大都市圏における大規模な自然災害や感染症の流行は事業継続の弊害となり、災害の程度によっては経営悪化に繋がる可能性があります。
地方に新たにオフィスを構えて万が一の災害時に備えるというBCP対策は、新型コロナウイルスの影響によってさらに加速したといえます。
本社機能の移転、または分散によって将来起こり得る自然災害のリスクを回避することができるため、BCP対策が不十分な企業にとっては大きなメリットが生まれます。
地方移転は優遇税制が受けられるなど数多くのメリットが生まれますが、デメリットもしっかり理解した上で上手にリスクヘッジをしていかなければなりません。
最大のデメリットといえるのが、顧客・取引先・省庁などとの接点が地方移転によって弱くなってしまうことです。
特に東京に本社を構える大企業では、これまで培ってきた調達・協業・販売・採用の基盤などを地方でも同じように築くことが難しく、新たな基盤を組み立てる必要があります。
また、顧客や取引先とのコミュニケーションに支障が出ることもあり、地方移転後の事業のシュミレーションを事前に行っておくことはとても大事になってきます。
会社の方針に全ての従業員が納得するかといったらそうではなく、本社の地方移転に伴う地方移住を望まない従業員も少なくありません。
日本の企業においては従業員が正当な理由なく異動を拒否することはできませんが、異動を望まない場合には離職するという選択肢を取られてしまいます。
企業を支える大切な従業員と共に本社の地方移転を成功させるためには、地方移転後のビジョンを明確化し、従業員と企業が同じ未来を描けるかどうかが鍵となります。
移転先にもよりますが、ITインフラ整備が整っていないことで業務に支障が出てしまうこともあります。
IT企業は体ひとつあればどこでも仕事をこなすことができる業種ですが、肝心なITインフラが移転先に整っていなければ本末転倒となってしまうのです。
現状、高速光インターネットや5Gのインフラ整備はどうしても都心部が優遇されてしまうため、移転先のITインフラの状態次第で移転を断念せざるを得ないケースもあります。
大量の設備を抱える企業では、設備の移動や引っ越しに対するコストがかなり大きくなってしまいます。 また、登記変更などの手続も多数あるため、移転前後は経営者は多忙を強いられると考えておきましょう。
イニシャルコストを抑えたい場合、まずは従業員数名単位で異動をさせて、地方での雇用も短期間ではなく数年を見据えて計画的に行うなどの対策が有効となります。
企業の地方移転におけるメリット・デメリットをわかりやすく解説しましたが参考になりましたか?
2015年から国が促進してきた企業の地方移転ですが、新型コロナウイルスの流行によって大企業が従業員千人以上の異動を計画するなどの動きもあり、今まさに大きな注目を浴びています。
本社機能を地方に移転した企業は、条件を満たすことで地方拠点強化税制の対象となり、オフィス減税や雇用促進税制を受けられるといった大きなメリットが生まれます。
地方移転における最大のメリットはさまざまなコストを削減できることであり、将来的に大きな成長を目指している企業にとっては追い風となることでしょう。
地方移転のメリットは企業にだけはなく従業員にももたらされます。
都会ではなかなか味わえない自然が豊かな環境で家族とのんびり暮らせる、都会の人混みから解放されて通勤時間が短縮されることで自由な時間が生まれるなど、新生活への期待は膨らむことでしょう。
今後、本社の地方移転を計画されている経営者は、自社で利用できる優遇税制や地方自治体による支援をしっかりと把握し、尚且大切な従業員を失わないようにケアを怠らないようにしましょう。
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